Title

トップ

設立趣旨

構成メンバー

研究会・定期セミナー情報

連絡先・アクセス

設立趣旨

目的・目標

 世界の生命科学研究の動向は、この2年間に急激に変貌を遂げつつある。すなわち、世界的規模で急速にポストゲノムの流れが起こりつつあり、そこでは、生命の機能をゲノム解析から解明する方向性とは相補的に、生命システムの本質である恒常性、後天的学習性、進化の柔軟性を、生命システムを構成する要素間の関連として全体的に捉える”構成的生命科学”が、まさに世界の潮流となりつつある。
 当該センターは、このような世界的な生命科学研究の流れの中にあって、東京大学総合文化研究科を国内拠点とし、”構成的生命科学”で卓越した成果を挙げている国内外の大学と連携して新しい生命科学研究を強力に推進し、欧米の追随を許さない成果を挙げうる拠点形成を行うことを目標としている。

Logo

必要性・緊急性

 近年、生命科学は、「生命現象は、その構成単位である分子の構造や、代謝反応の各素過程の詳細を知ることで解明できる」とする還元的アプローチにより、急速に発展した。例えば、生命現象の解明するために、DNAといった巨大分子の構造と機能を枚挙していく研究方向は、ヒトゲノム計画などで遂行され、大きな成功を収めている。
 ところで世界の生命科学研究動向に目を移すと、近年世界的規模で急速にポストゲノムの流れが起こり、上述の”構成的生命科学”がまさに世界の潮流になりつつある。このような学問の流れの中にあって、日本が先鞭をつけた複雑系の見方による生命科学の新しいアプローチである”構成的生命科学”に関し、今後予想される欧米の素早い動向に対抗するためにも、当該センターを中心とした大学間連携により、国家的規模のプロジェクトを早急に立ち上げる必要がある。

独創性・新規性等

 欧米では既にポストゲノム時代の生命科学として、数学・物理学とも連携をとった生命研究プロジェクトがスタートしている。今のところ欧米での方向は、バイオインフォマティックスにみられるように生命現象の研究に情報科学・物理学を「使う」ものであり、ここで目指すような生命システムの持つ「新しい原理を探る」ものではない。他国の研究機関も、同様な研究体制を整えつつあるが、「複雑系生命システム研究センター」はそのさきがけとしてこの分野の確立を目指す。
 世界的にみて、複雑系としてのアプローチを前面に出した生命科学研究センターとして、最も有名なサンタフェ複雑系研究センターがある。しかしながら同センターは、計算機科学が中心であり、実験部門を有しないため、自然科学としての学問的な発展の上で限界があることが指摘されている。複雑系研究において、理論と実験を含む自然科学の諸分野が連携し、さらに文科系の学問分野を含み込むような当該研究センターは、世界にも類が無く、実現の暁には日本の生命科学のこれまでの実績を基盤としつつ、かつ、新しい方向性を持った生命科学研究の拠点となるであろう。

総合文化研究科から萌芽した研究センターとして

 東京大学総合文化研究科では、大学院重点化を契機として、数理から物質・生物さらには人間に及ぶ広い分野を細分化せず、むしろ統合的研究の展開に適した体制へと整備してきた。しかしながら、学際領域融合型研究・教育を目指すが故に、萌芽的研究に適した研究組織と展開的研究に適した研究組織の違いや、既存の大学組織における制度的制約を、認識せざるを得なかった。
 本部局では、平成12年から16年にかけて東京大学大学院・総合文化研究科広域科学専攻でCOE(特別推進)「複雑系としての生命システムの解析」が遂行された際に、複雑系の数理科学、ナノテクノロジー、超分子化学、発生生物学という異分野間で共同して研究を行える体制を整備した。
 平成15年からスタートした21世紀COE「融合科学創成ステーション」では、生体システムの対象を生態系や脳・認知科学にまで広げ、数理科学、物性物理学・化学、生態学の専門家も参画して、生体システムの階層性を貫く原理を解明する研究体制ができ上がった。
 平成17年に設立された当該センターでは、学外でこの分野を見通すことのできる著名な研究者を運営協議委員に任命し、複雑系理論部門、人工複製系合成部門、発生過程解析部門、生体系計測部門、共生・進化解析部門、脳情報システム部門の6つの部門から”構成的生命科学”の研究実績を挙げ、新しい生命科学の国内および国際的拠点化を図りたいと考えている。

学問的効果

 この半世紀の生物学の主流は、ある機能を持つ分子や遺伝子を探る研究にあった。最近、生物を「システム」として理解しようという潮流が始まりつつあるが、いまのところ、とりあえずよいデータベースを作ろうとする方向で進行している。これに対し本センターでは、複雑系理論および、生命システムを”作って理解する”という実験との協同作業で、生命システムへの基本的概念を見出そうとしているところに最大の特徴がある。
 COE(特別推進)「複雑系としての生命システムの解析」の発足(1999年)以来、得られつつある数々の成果は、このアプローチの重要性を証明している。また、それに付随した新たな生物学的計測方法の開発は、新たな「生命」に対する構成的理解をもたらすのみならず、新たな産業を生み出す可能性も秘めている点で特筆に価する。

社会的効果

現在、社会から大学組織に求められているのは、国際的競争力を持った先端技術の創成、新たな概念・価値の創造、産業界を支えうる新しい事業分野の創出のための基礎研究を展開しうる人材の育成等の役割を果たすことであろう。本センターが設置されることにより、以下のような社会的効果がもたらされると期待される。

  1. ポストゲノム時代の生命科学としての役割
    ポストゲノムの生命科学が進むべき明確な方向性を示すと共に、生命科学へマイクロファブリケーション等の技術を導入することで、国際的競争力をもち、かつ次世代産業に役立つ科学技術が誕生すると期待される。
  2. 人材育成の上での役割
    研究に携わる優秀な大学院生・博士研究員を擁す本センターは、次世代の科学技術を背負う貴重な人材を輩出することとなる。

基礎研究の集約型研究組織

「複雑系生命システム研究センター」が体制として定着すれば、日本の基礎研究における以下の問題点を改善することにつながると考えている。

  1. 本センターの主旨に沿った研究を行っている優秀な研究者が本センターに一定期間結集し、重点的に研究に従事することで、大きな成果と研究のネットワーク化を行うことができる。
  2. 本センターの国際交流ステーションを活用し、成果を国内外へ迅速に伝えることが可能となる。特に外国人客員教授の場合は、新分野を国際的に定着させる。
  3. 大学間連携を基軸として本センターの設置は、日本における基礎科学研究の進展の上での弊害となっていた学内の部局の壁や大学間の壁をうち破ることとなり、日本の基礎科学の発展に大きく寄与する。