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SPECIAL CONTENTS 01研究者探訪 vol.201

市橋 伯一
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東京大学大学院総合文化研究科教授 NORIKAZU
ICHIHASHI
市橋 伯一

2006年 東京大学大学院薬学系研究科博士課程 修了
2019年より現職
研究内容
進化合成生物学
[質問1]

なぜ研究者になったのか

 父親が大学で研究をしていたので幼少の時から研究や開発に興味があり、将来は研究者かエンジニアになろうと思っていました。ただ、分野については特にこだわりはなく場当たり的な決断をしてきました。最初はロケット開発がしたいと思って大学に入りましたが、日本に職が少ないことに気が付いて、じゃあ当時盛り上がっていた生命科学に行こうと思い薬学部で微生物学や分子生物学をやってみましたが、頑張ったわりには大して面白い成果も出ず、面白いところはおおむねやられてしまっているように感じてウジウジしていました。そんなときに、人工生命や生物物理の一般書や金子邦彦さんの「生命とは何か」を読んで、生命を作って理解するという新しいアプローチに衝撃を受けて(ええっ、そんなサイエンスありなの?って思いました)、ポスドクから金子さんと共同研究をされていた四方哲也さんの研究室に入って、合成生物学(当時はまだその言葉はなかったのですが)を始めました。この分野は結構楽しくて、自分としては面白い結果も出て割と評価もされているように感じたので、そのまま研究を続けています。
[質問2]

研究生活

 私はとにかく研究も実験も好きでのめりこむたちなので、学生時代は朝から晩まで実験をしていました。しかし、学生時代はその割には成果がでず、どんなに頑張ったところでテーマがつまらなければ何にもならないことを実感しましたので、今はきっちり価値のあるテーマを見定めてからのめりこむようにしています。今でも時間があれば自分で実験をしています。ただ、PIになって変わってきたのは、研究や実験を好きだからではなく(好きではあるのですが)責務として行うようになりました。この世界はいろいろ問題点がありますが、科学者にはそれを少しでもましなところにする義務があると思っています。ラボの学生は、生徒というよりも一緒に研究をしてくれる仲間だと思って指導をしています。月に1度の進捗報告で発表をしてもらい、毎週Slackでテキスト数行程度の進捗報告をしてもらっています。優秀な研究者仲間は多ければ多いほどいいので、やる気のある人のサポートは惜しまないようにしています。
石原 秀至先生
[質問3]

UBIの研究への関わり

 私が今やっている研究は、試験管内で自己複製する分子を作ってその進化を観察したり、試験管内で生物と同等な(もしくは超える)能力を持つ分子システムを作る研究をしています。複雑系生命システム研究センターやUBIの他の皆さんとはちょっと毛色が違うかもしれません。しかし、私は、UBIの目指す普遍的な生命の姿を理解するには、現存生命システムを研究するだけでは足りないと思っています。私たちが目にする現存生命は特殊例かもしれません。複雑系でない生命もありうるかもしれません。そうしたもっと別の生命のかたちを知るには作るしかないと思って研究をしています。
石原 秀至先生
[質問4]

学生(学部生)に向けてメッセージ

 現代社会には、温暖化、エネルギー枯渇、生物多様性の喪失、少子化、水不足など数多くの問題があります。これらの問題を解決し、人類が文明を存続させていくためにはもっと科学技術を発展させるしかありません。そのためにはもっともっと多くの才能が科学や技術の開発に携わる必要があると私は考えています。研究開発には向き不向きが強くありますが、自分が向いていると思う人はぜひ、研究の道に進んでもらいたいと思います。分野は特になんでもいいと思います。個人的には、普遍性生物学や合成生物学には大きなフロンティアがあると思っていますが、どんな研究がどんなふうに花開くかは予想できないことが多いので、なるべくいろいろな分野を発展させることが大事だと思います。