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SPECIAL CONTENTS 01研究者探訪 vol.203

土畑 重人
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東京大学大学院総合文化研究科准教授 SHIGETO
DOBATA
土畑 重人

2010年 東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程 修了
2020年より現職
研究内容
進化生態学・マクロシステム生物学
[質問1]

なぜ研究者になったのか

 自然とふれあう機会が多いところで育ちました。小学1年生の時に夏休みの自由研究で昆虫採集を選んで以降、昆虫の多様性や地域ごとの違いが面白くて、この関心は今でも続いています。地元・岡山にある倉敷市立自然史博物館・くらしき昆虫館には、中学高校の頃は毎週通っていました。理科Ⅱ類だった学部1,2年の講義で初めて生態学・進化学について体系的に学びました。生物進化の研究には、生物学としての面白さと同時に、遠い過去のイベントをどのように理解するかという哲学や、進化観の歴史的変遷といった、メタ的な面白さもあります。学部後期課程では、当時は教養学部基礎科学科にあった科学史・科学哲学コース(現・学際科学科)に進学し、生物学史の廣野喜幸先生のもとで学びました。廣野先生は社会性昆虫シロアリの研究で博士号を取得されていて、先生の勧めもあり大学院では生態学の嶋田正和先生の研究室に進学しました。野外生物の社会性の進化、特に社会の中での対立関係の研究は、私のこれまでの関心にとてもよくマッチしており、基礎的な研究を続けるのは大学の研究者が一番だと思ったので、幸いさしたる迷いもなく博士課程に進学し、現在に至ります。
[質問2]

研究生活

 私たちの研究室では、メンバーそれぞれが異なるテーマ・対象生物の研究をしており、各自の自主性を重んじて活動しています。週1回のラボミーティングは、それぞれの研究関心や進捗を知る機会としてとても重要です。対象生物は基本的に野外で採集してくるので、フィールドワークも重要な活動の一つです。目的地が同じなら、研究室メンバー複数人で泊まりがけで出かけることもあり、野外生物学研究ならではの充実した時間を共有しています。博士課程学生が主体となって、ゲストセミナー企画「生態学こまば教室」を開催しており、学外の若手研究者との交流も積極的に行なっています。 …と紹介してきたところで、私自身はというと、大学教員のはしくれとして研究以外の業務にも携わりつつ、家では2児の親としてワーク・ライフ・バランスにも気配りしながら、という人生ステージにあります。研究室メンバーには、研究に専念しようと思えばできる時期にあることを羨ましく思いつつ、事あらば自分の人生を一番に考えてほしい、と伝えています。
土畑 重人先生
[質問3]

UBIの研究への関わり

 学部入学から博士号取得までを駒場Ⅰキャンパスで過ごしましたので、21世紀COEや複雑系生命システム研究センターでの活発な研究活動についてはいつも耳にしながら過ごしていました。特に、金子邦彦先生や池上高志先生の複雑系科学に基づく生命観については、ご著書・講義から多くの影響を受けています。一方で当時は、それらの知見をマクロ生物学の実証系にそのまま適用することの難しさもあり、指をくわえて見ていた、という表現の方がしっくりくるかもしれません。ご縁あって2025年度よりセンターに参加させていただきました。技術革新によって野外生物研究の幅が大きく広がり、システムとしての生命研究がスケールを問わず行える時代になりました。マクロ生物学ならではの視点で、センター・機構の活動に貢献していきたいと思っています。
土畑 重人先生
[質問4]

学生(学部生)に向けてメッセージ

 あなたが興味のある研究分野で「知りうること・知るべきこと・知りたいこと」はそれぞれ何でしょうか。研究は、私たちが世界について現在知っていること・知らないことの界面を共有しながら、知らないことの霧の中に、少しずつ、歩みを進めていくプロセスだと思います。「知りうること」―技術の進歩は加速度的です。「知るべきこと」―不確実性の時代を私たちは生きています。そして、「知りたいこと」―霧の向こうに世界の美しさを予期することだと思います。その研究分野へのあなたの興味は、これら3つのどれに根ざしているでしょうか。それがあなたの原動力です。残り2つは、霧の中で迷いそうな時に、きっと助けになることでしょう。とはいえ、日々、霧はなかなかに深いです。