僕が生命動態ゼミを履修していたのは大学1年生の夏学期から翌年の冬学期までの4学期間です。高校生の頃からファンであった金子邦彦先生の研究室への配属が叶い、金子先生や特任助教(当時; 現在は古澤研助教)の斉藤先生のご指導のもとで、細胞が分化・分業するメカニズムについて、数理モデルを用いた理論研究をおこないました[1]。ゼミは毎週、僕がそれまでの1週間でプログラムを書いて計算した結果や問題点について報告し、先生方からアドバイスを受け、僕がまた計算をして…という形で進みます。1学期目などは二人の先生のおっしゃることにただ従っているだけ、でした。ですが、2学期目の後半あたりから、自分自身の理解も徐々に深まっていった気がします。
ゼミの履修が終わったあとも共同研究は続いていて、ゼミで用いたモデルに空間構造を加えてふるまいを観察したり、進化のシミュレーションをおこなったりしました。現在、あたらしい論文を共同執筆中です。金子研の院生やポスドクの方と話してアドバイスをいただいたり、ゼミを通じて知り合った友人・先輩と読書会をしたりといった機会にも恵まれ、本当にありがたいですし楽しいです。
[1] Yamagishi JF, Saito N, Kaneko K (2016) Symbiotic Cell Differentiation and Cooperative Growth in Multicellular Aggregates. PLoS Comput Biol 12(10): e1005042. doi:10.1371/journal.pcbi.1005042
学部2年生だった2014年度に前期と後期の二期にわたって若本祐一先生の研究室にお世話になりました。 中学生の頃から生物学に興味があった私は、物理学を学んだ頃から物理をバックグラウンドとする人々が生命を対象として行っている研究に徐々に興味を持つようになり、このゼミと出会いました。 初めて若本研に行った日に若本先生から紹介していただいた論文はとても印象に残っています。腰を据えてじっくりと読んでみると、そこにはそれまで私が学んできていた生物学とは違う切り口から生命現象に迫る研究結果が記されていて、その鮮やかさに感動した記憶があります。 前期は読んだ論文の内容を起点として色々と質問をしたり実験を体験したりと充実した時間を過ごしました。分子生物学の発展とともに確立されてきた見方では何が捉えられていないのか、そこから脱却し異なる角度から光を当てようとしている研究者の方々はどう生命現象を理解しようとしているのかといったところを、私はあの時期に具体的な質問や議論を通して探っていたように思います。試行錯誤しながら頭を揉みほぐしていくようなあの刺激的な感覚はとても印象に残っています。 前期の議論の中から生じてきた私のとある疑問が研究テーマとして面白そうだということになり、後期には発現ゆらぎに関するそのテーマで、若本研で開発されたマイクロ流体デバイスを用いて研究をさせていただきました。自分の視点が一つの小さな研究プロジェクトにつながったというのは嬉しいものでした。またデバイスが当初なんとなく思っていたよりも手作り感のあるものだったり、計測がうまくいかない様子を目の当たりにしたりと、研究の現場を実体験をもって垣間見ることができたと感じています。 研究室のメンバーは皆さん優しく親切でとても楽しいラボでした。特に当時博士課程2年生だった野添嵩さんと技官の大倉玲子さんは毎週のように議論や実験に付き合って指導してくださり、お二人には本当にお世話になりました。結果的にこのゼミでの経験が進学先の研究室を考える時の決め手となりました。 少し背伸びをしてでも先生や先輩の議論に喰らいついていこうとするとそれだけ有意義な経験をさせてもらえるゼミだと感じています。