[質問1]
なぜ研究者になったのか
実はあまり明確に研究者になろうと志したきっかけがあるわけではありません。研究をやっていると、地道に下積みを重ねていくうちに、ある時突然ふっと新たな道が開ける瞬間、のようなものが多かれ少なかれあるかと思うのですが、そんな小さな打開の瞬間を何度か経験して、その時の喜びを糧に今日まで続けてきた感じです。これまでいつも周囲の研究者の方々や家族などからも支援、応援していただいているので研究を続けられてきました。
学部生の時に分子生物学を勉強して、生命現象のメカニズムをうまく説明できることに感動した覚えがあります。そこで、「生物の多様性がどの様に生み出されるのか」ということに漠然と興味を持って、大学院の進学先の研究室を探しました。ただ、実際にテーマを与えられて研究してみると、学部の時にお勉強した分子生物学だけで全てが説明できるほど単純じゃないとわかりました。
研究を始めたのはちょうど次世代シーケンサーというゲノム配列を効率よく解析する機械が流行り始めた頃でもあり、生物情報学をはじめいろいろな分野の研究者と出会い、教えてもらったり一緒に研究をしたりするうちに、少しずつ興味が広がってきました。
複雑系生命システム研究センターの先生方にも、システム生物学、非線形数理科学の世界を教えられ、その奥深さに惹かれるとともに、生物の多様性・複雑さを説明するには多面的な切り口が必要だと実感しました。単一の生命現象を切り出して上手に説明するだけでなく、現象の裏にある本質まで俯瞰的に捉える必要があると自戒しています。